「中食」という言葉をご存知でしょうか。ニュースなどでも取り上げられたこともありますが、「聞いたことはあるけれど詳しくは知らない」という方が多いのではないかと思います。
「外食」や「内食」とは異なるまったく新しい食事形態として、2000年代初頭から話題にのぼりはじめた「中食」は、この令和の時代に「手軽に美味しいものを食べることができる食事形式」として改めて注目されています。
豆知識
「中食」の読み方は「ちゅうしょく」や「なかじき」など様々ですが、現在は「なかしょく」という読み方が主流です。
また新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行などの要因もあわさって、「中食」の市場規模は加速度的に拡大しつつあります。
そこで今回は、新時代に広まりつつある食事形態「中食」について、言葉の意味や外食との違いといった基礎知識から、現在の「中食産業」を取りまく状況などといった最新情報まで、しっかりとご紹介していきます。
中食の意味は?外食との違いについて
まずは、「中食」という言葉の意味から確認していきたいと思います。
「中食」を一言であらわすならば、「外部で作られた料理を自宅に持ち帰って食べる、あるいは配達してもらったものを食べる食事形態」となります。
豆知識
例えば、スーパーやコンビニのお惣菜や、ピザやお寿司の出前などは、身近な「中食」の形態といえます。
外部で作られた料理をその場で食べる「外食」と異なり、自宅で時間や人目を気にせず食べることができるのが特徴です。
また「内食」のように自宅で一からすべて調理する必要がないので、手間もあまりかかりません。
つまり「中食」とは、リラックスできる自宅の中で、シェフなどが調理した美味しい料理をお手軽に楽しむことができる、より利便性と快適性を追求した食事形態といえます。
増え続ける中食の形態について
「中食」が注目され広まりつつあることは前述しましたが、「中食」に該当する食事形態もまた、「中食」の広まりにあわせて、年々増え続けています。
ここでは、増え続ける「中食」の形態について、冷凍食品やお惣菜などの馴染み深いものから、最近流行している食事宅配サービスまで、その特徴を解説していきます。
デリバリー
まずは、「中食」として最もわかりやすいデリバリーから。デリバリー(配達)の名の通り、お店で調理した料理を届けてもらうことで、お店の料理を自宅で味わうことができます。
宅配ピザなどのように、注文したお店のスタッフが届けてくれる昔ながらのデリバリーもありますが、最近では「Uber Eats」のように、シェアリング・エコノミーを利用したデリバリーサービスも増えてきています。
豆知識:シェアリング・エコノミー
シェアリング・エコノミーとは、モノや人・場所などを多人数で共有する仕組みのことです。
例えば「Uber Eats」であれば、「お店で作られた料理を、「配達パートナー」と呼ばれるお店と関連性のない配達員が配達する」という制度を採用しています。
つまり「Uber Eats」では、シェアリング・エコノミーの考え方に基づいて、「多数のお店における配達員の共有」が行われている、といえます。
テイクアウト
マクドナルドのハンバーガーなどをはじめとしたテイクアウトも「中食」の一つです。
「テイクアウト」という言葉で想起されるようなチェーン店でのテイクアウトサービスの利用だけでなく、デパ地下や駅ナカでお弁当を購入したり、常温のコンビニ弁当やスーパーのお惣菜を買って帰ることも、テイクアウトに含まれます。
また最近では、新型コロナウイルス流行の影響もあってか、「「西東京まちめし」プロジェクト」のような地域密着型のキャンペーンとともに、テイクアウトサービスを始める地元の飲食店も増加しています。
「西東京まちめし」プロジェクトの広告ポスター。専用のアプリやSNSなどを使用して、テイクアウトサービスを実施しているお店の情報を提供しています。
テイクアウトの場合は外出してお店に行く必要がありますが、同時に軽い運動やリフレッシュにもなります。日々のジョギング代わりに利用するのも良いかもしれませんね。
冷凍弁当・冷凍惣菜
スーパーやコンビニなどで販売されている冷凍惣菜や冷凍食品も「中食」に該当します。
特にコンビニでは、昨今の技術の進歩やプライベートブランド(PB)の浸透も相まって、さまざまな冷凍惣菜が主力商品になりつつあります。
最近は冷凍弁当も人気のアイテムで、生協のパルシステムなどが有名ですが、最近ではnosh(ナッシュ)などの、新しい冷凍弁当専門の宅配事業(いわゆる「食事宅配サービス」の一つ)を行っている会社も増えています。
※パルシステムの冷凍弁当
※ナッシュの冷凍弁当
味にこだわった「美味しい冷凍弁当」が多いのはもちろんのこと、会社によっては、専属の管理栄養士が監修して、塩分やたんぱく質を控えめにした「健康に良い冷凍弁当」も販売しているのが特徴です。
また、筋肉を増やしたい方向けの食事を提供している「マッスルデリ」のような、一風変わった冷凍弁当宅配サービスも登場しています。 なお、これらの冷凍弁当宅配サービスは、何食分かを一気に届ける形態となっているので、利用には冷凍庫の空きスペースが必要です。
豆知識
会社によっては、特定の条件で冷凍庫を無料で貸し出すというサービスを実施しているところもあります。
宅配弁当・配食
高齢者向けとして広まりつつある食事宅配サービスとして、宅配弁当があります(場合によっては、配食と名づけられていることもあります)。
こちらもも「中食」形態の一つで、「ワタミの宅食」で有名なワタミをはじめ、様々な企業が宅配弁当事業に参入しています。
豆知識
宅配弁当(配食)とは、注文すると毎日特定の時間に一食分のお弁当を届けてくれるサービスです。宅配予定日の当日に調理をする会社も多く、冷凍弁当よりも食材が新鮮な傾向にあります。
毎日のふれあいや安否確認をウリにしている会社も多く、高齢化社会の進む日本において、その需要は年々増しています。
また、たいてい日替わりでメニューが変わるほか、旬の食材を使用した季節限定メニューなどもあり、日々の食事に彩りを添えることができるのも宅配弁当の特色です。
さらに近年では、一部の市区町村などが宅配弁当事業を実施している会社と連携して、独自に配食サービスを実施しています。例えば港区においては、高齢者及び障害者のみの世帯を対象として、日々の安否確認を兼ねた配食サービスの仲介を行っています。
広まる中食と成長する市場規模
前項では「中食」の多種多様な形態をご紹介しましたが、「中食」の形態が多様化するとともに「中食」の市場規模もまた、年々増加しています。
一般社団法人日本惣菜協会が毎年発刊している「惣菜白書」の2020年版によれば、「中食」の市場規模は10年前と比較して約127%も成長しており、「中食」の広まりとともに中食市場も活気づいていることがうかがえます。
「2020年惣菜白書」(一般社団法人日本惣菜協会・2020年6月1日発刊)のダイジェスト版PDFより引用。
中食の市場規模が右肩上がりで成長している、つまり、中食需要が年々高まっている要因としてあげられるのが、「家族構成の変化」、「働き方の変化」の2つです。 それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。
家族構成の変化
まずは「家族構成の変化」から。昨今、少子高齢化や未婚率の増加が問題となっていますが、その影響で高齢者のみの世帯や一人暮らし世帯も増加しています。
こうした世帯では、自炊もなかなか億劫であるほか、いざ自炊したは良いものの二、三日ずっと同じような料理が続いて飽きてしまうことも少なくありません。
また、食材の費用を考えると自炊するよりも購入したほうが経済的であることも多いです。宅配弁当や配食サービスであれば味も美味しく、また日替わりでメニューが変わるので、高齢者のみの世帯や一人暮らしの世帯に人気がある、というわけです。
働き方の変化
次に「働き方の変化」です。平成時代には、官民一体で女性の社会進出が推進されました。
それに伴い、家庭を持っていても女性が働きに出る、いわゆる「共働き」の世帯が増え、「料理をじっくり作る」ことよりも「料理を早く用意して早く食べる」ことが重視されるようになりました。
出勤前の忙しない時間や終業後の疲れた時間に、手早く食事を用意したい。こうした「時短」ニーズにこたえているのが「中食」です。
特に何食分かを一気に届ける形態となっている冷凍弁当やスーパー・コンビニでまとめて購入できる冷凍惣菜は、そのお手軽さはもちろんのこと、賞味期限も長めであるため、共働き世帯にマッチしている「中食」形態であるといえるのではないでしょうか。
これからの中食市場について
最後に、これからの中食市場についての展望を述べて、本項のまとめとしたいと思います。
先程ご紹介した「「食」の市場規模と構成比推移」のグラフは、2019年までのデータを元に作成されていますが、今後もしばらくは、このグラフのような右肩上がりの成長率が続くのではないかと思います。
その大きな理由となるのが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行です。2020年初頭から世界的な流行をみせている新型コロナウイルス感染症によって、人々の暮らしは世界中で大きく変化したといわれています。
日本でも「Stay Home」や「ソーシャルディスタンス」をはじめとした、不要不急の外出やいわゆる「3密」(密閉、密集、密接)を避けて過ごしていく新しい生活様式を、官民一体となって推進しています。
これに伴って、「美味しい料理を食べたいけれど、「3密」は避けたい」というニーズが生まれました。
そして、ここまで解説してきた通り、家の中にいながら外食のような美味しい料理を食べる食事形態といえば、「中食」です。つまり、「中食」は新しい生活様式に適合した食事形態であるといえ、これからの「ウィズコロナ時代」において、より「一般的な食事形態」として浸透していくものと予測されます。
先程述べた「家族構成の変化」や「働き方の変化」の影響も相まって、今後の「中食」に対する需要はますます高まると同時に、中食市場も今以上に成長していくことでしょう。
参考サイト:「2020年惣菜白書」一般社団法人日本惣菜協会
参考サイト②:「港区の配食サービスについて」東京都港区公式サイト
RECOMMEND こちらの記事も人気です。
GREEN SPOONの冷凍スムージーとスープを実際に飲んでレビュー!みんなの口コミ・評判もチェック!
GREEN SPOON(グリーンスプーン)は、毎月定額で自分に必要な野菜がスムージーやスープと言った形で自宅に届くサービスです。 ゆいこ多くのメディアに掲載され、oggiやSTORY、VERY、ViViなど人気女性誌に取り上げられています。 食材は加熱滅菌されている上に甘味料や保存料、化学調味料などの食品添加物を一切使用していないので安全性が高く、何より栄養素を損なわないように食材ひとつひとつを瞬間冷凍されており、出来上がりがフレッシュというのが魅力です。 GREEN SPOONの特徴 GREEN SPO ...
ハレトケの宅配弁当を実際に食べてレビュー!みんなの口コミ・評判もチェック!
ハレトケは、株式会社クロノスが運営する宅食サービスで、美味しくて栄養バランスの良い冷凍宅配弁当を販売しています。 名前の由来は、日本人の伝統的な世界観とされる「ハレ(晴れ)」と「ケ(褻)」からきており、体のための食事を提供することをコンセプトとなっています。 ゆいこハレトケのロゴマークは朝日をモチーフにしているそうですよ! この記事ではハレトケのお弁当について、みんなの口コミ・評判や編集部の実食レポートをもとにした体験談と、送料や1食あたりの料金もわかりやすく紹介します。 美味しい?まずい?といった肝心の ...
世界No.1の完全栄養食ブランド「Huel」共同創業者ジュリアン・ハーンに聞いた日本市場への期待
近年注目を浴びる、食事に必要な栄養素を手軽にとることができる完全栄養食。中でも、Huelは、2020年1月にシリーズ累計1億食を突破し、誕生から5年で完全栄養食の世界No.1ブランドに成長したグローバルリーダーだ。 今回、Huelの共同創業者であるジュリアン・ハーン(Julian Hearn)氏にインタビューをする機会を得たので、Huel社の創業ストーリーやビジョン、日本市場への展開について詳しく伺った。 Julian Hearn(ジュリアン・ハーン) 共同創設者 ロンドン出身。大学卒業後にウェイトローズ ...
【実食レビュー】塚田農場のお弁当を食べてみました!チキン南蛮が絶品!?口コミも要チェック!
塚田農場は株式会社エー・ピーカンパニーが運営する居酒屋チェーンですが、塚田農場から『おべんとラボ』として宅配と店舗の両方でお弁当を販売しています。 ゆいこさまざまなメディアに取り上げられており、芸能人達がよく口にする、いわゆる「ロケ弁」としても人気のお店です。 塚田農場のお弁当は、お弁当に関するグランプリにおいて数多く受賞しており、ロケ弁グランプリで1位をとったことも!食材はもちろん調理法にもこだわりがあります。 塚田農場のお弁当の特徴 食材には、秋田県産最高品質の「あきたこまち」をはじめ、赤身と脂のバラ ...
海の詩の冷凍寿司を食べてみました!「凍眠」された冷凍握りのお味は!?
テレビ朝日でも取り上げられた冷凍寿司。今までとは違う「凍眠」という技術で急速冷凍され、新しい宅配寿司の形として注目されています。 この冷凍寿司ですが、株式会社テクニカンの開発した「凍眠」という技術をもとに、神奈川県で宅配寿司を提供している「海の詩」が全国販売を開始しています。 画像出典:テレビ朝日 2021年3月13日「冷凍なのにまるで握りたて 宅配寿司店の秘策とは」 凍眠の特徴 同じ温度の冷凍庫に対して、約20倍の速さで冷凍可能 瞬間冷凍することで、発生する氷の細胞が小さく、細胞の破壊を防止 解凍時の旨 ...
産後の予行演習として食材宅配の「オイシックス」のお試しセットを頼んでみたレビューと感想
ゆいこ私は現在妊活中なのですが、妊娠中や子どもが産まれたら、しばらくは自転車に乗れなくなると思い、スーパーが遠くて自転車でないと行けない場所に住んでいる私は心配していました。 そんな時、宅配野菜があるということを知り、利用してみることに。 Oisix(オイシックス)は会員数220万人を突破した売上No.1の野菜宅配。 有機野菜や減農薬野菜のほかに、肉・魚、加工品まで幅広く扱っています。 有機野菜や減農薬野菜、合成保存料と合成着色料不使用の加工品など健康に気を遣った食材ばかりなので、妊娠中や授乳中はもちろん ...